2.1 耐震構造について

 浜岡原発に対して有効な耐震構造を検証する前に、まずここでは耐震構造とはどのようなものであるかについて述べていく。
耐震構造とは、地震で生じる揺れに耐えるように設計された構造のことである。この耐震構造は耐震構造(一般構造)・免震構造・制震構造の3つに分類することができる。
 まず耐震構造(一般構造)とは、地震力に耐える構造技術であり、柱、梁、壁などの構造物を弾性的または弾塑性的に地震力に耐えるようにする技術である。これらは、剛構造と柔構造と呼ばれ、剛構造は地震の揺れを受け止めるように柱や梁等を太くししっかり固定して、建物の形を変えずに建物全体が揺れるものである。一方、柔構造は、接合方法は剛構造と同じ様なものだが、部材が細い。そのため地震の揺れに抵抗せずにしなって、地面が揺れると、下の階から時間差で揺れていく。そして、地面が逆方向に揺れると、それに合わせてまた下の階から動いていく。これの繰り返しで地震が終わっても建物はしばらく揺れているといったものである。
 次に免震構造とは、地震振動が建物に直接伝わらないように基礎などから分離、絶縁する構造技術である。免震構造に使われる絶縁装置は、免震支承・アイソレーターなどとも呼ばれ、ゴムと鋼板を何重にも積層して接着した、積層ゴム支承が多く用いられている。免震技術はこの積層ゴム体を中心としたものであるが、その他にも他の弾性体を利用したもの、単なる滑りを活用したもの、吊り構造を利用したもの、電磁力を利用したものなどと多彩である。
 最後に制震構造とは、地震エネルギーをダンパなどに吸収させ振動を弱める技術であり、建物の各階または頂部に、各種ダンパを設置し、建物に入ってきた地震エネルギーを消費させ、建物の振動および被害を消去低減する構造技術である。制震技術の中でもいくつかに分類することができ、制振部材を使用した技術に鋼板パネルとアンボンドブレース、ダンパ使用した技術に金属の塑性エネルギーを利用した履歴ダンパ・粘性体の粘性抵抗を利用した粘性ダンパ・摩擦抵抗を利用した摩擦ダンパ、質量効果機構などがある。質量効果機構は構造物頂部に共振質量を設け、これを振動させることで本体の振動を抑制する物で、T.M.D(Tuned Mass Damper)と呼ばれることもある。一方、これらの受動的(パッシブ)な制振に対し、付加質量に駆動装置を付加し、これをコンピュータ制御で能動的に動かし振動制御効果を向上させる機構を主導的(アクティブ)制振と呼ぶ。アクティブな質量効果機構はT.M.D.に対しA.M.D.(Active Mass Damper)と呼ばれる。また、アクティブとパッシブの中間的存在として剛性・減衰だけを変化させるもの、アクティブとパッシブを入力レベルによって切り替えるものなどもあり、H.M.D.(Hybrid Mass Damper)などと呼ばれている。
 このように、耐震構造には様々な技術がある。その中でも、浜岡原発に有効な耐震構造について、次章ではこれらの耐震構造を比較して検証していく。

1.はじめに

1.1 東海地震発生の可能性

 地球の表面は、70~100kmもある巨大なプレート(岩盤)で覆われ、ゆっくり動いている。東日本は、「北アメリカプレート」に乗っていて、東から近づいてきる「太平洋プレート」がその下に潜り込んでいる。また西日本は、「ユーラシアプレート」の上にあり、南からの「フィリピン海プレート」が潜り込んでいる。プレートが潜り込むとき、2つのプレートの境界などにひずみがたまり、そのひずみが限界を超えると、岩盤に破壊が発生し衝撃が地表まで伝わり岩盤を振動させておこるのが地震である。つまり、日本は4枚のプレート境界の上に位置しているため地震が多発する場所なのである。近年では、新潟県中越地震・福岡県西方沖地震など大規模な地震が発生している。また、7月には関東地方で最大震度5強を観測する地震が発生している。
 その日本の中でも、とくに「フィリピン海プレート」が潜り込む東海から四国にかけての海域では、100年から150年の周期で、しかもほぼ同じ場所で、ほぼ同じ規模(マグニチュード8規模)の大地震が繰り返し起こっている。
 1976年(昭和51年)8月には、静岡県を中心とした東海地域で、「大地震が明日起こっても不思議ではない」という東海地震説が発表された。1854年の安政東海地震の後、東海地方より西側では1944年(昭和19年)の東南海地震や1946年(昭和21年)の南海地震がすでに発生し、この時、地震エネルギーが放出され、次の地震はしばらく後と考えられている。しかし、駿河湾から御前崎沖では約150年間地震が発生しておらず、地震エネルギーが蓄積されていると考えられており、地震活動の空白域と呼ばれている。このことから、近い将来、巨大地震の発生が予想されている。未だ大地震は起こることなく現在にいたっているが、「日一日と東海地震の発生が近づいている」というのが、地震学者の一致した意見である。

1.2 浜岡原発の現状と問題

 もし、東海地震が起こった場合、この地域には浜岡原子力発電所がある。
 浜岡原子力発電所は、静岡県御前崎町の西隣の浜岡町にある中部電力の原子力発電所である。浜岡原発の位置は、東海地震の想定震源域(東西50Km、南北100~120Kmの範囲)のほぼ中央に位置する。つまり東海地震が発生すると直下型地震となり、浜岡原発は大きな被害を受けることが危惧されている。静岡県では、浜岡原発付近の想定震度は6弱としている。過去の安政東海地震でも震度6だった。震度6に相当する加速度は250~400ガルである。浜岡原発原子炉の耐震性は、1号機・2号機が450gal、3号機・4号機が600galで設計されている。浜岡原発の耐震性は震度6に相当する加速度より上回っている。これだけ取り上げると安全といえる。
 しかし、兵庫県南部地震ではM7.2、震度7で、820ガルの揺れを記録している。浜岡は、東海地震(M8.0)の震源域なので、震度7で820ガル以上の地震が起こっても不思議ではない。新潟県中越地震でも震源地のほぼ真上に位置する川口町で、地表面で最大加速度振幅2515galという驚異的な地震動が観測された。原発の建設用限界地震は岩盤上の値で考慮されるので、地表面の値を岩盤上の値に換算すると約838~1257galもの加速度が襲ったことになる。また、1994年1月17日早朝、ロス・アンゼルス郊外で起こったノースリッジ地震では岩盤上での最大測定値1550galを記録している。この地震では高速道路が落下した。直後に「日本の高速道路は基準がちがうので安全」という宣言が出された。しかし、そのちょうど1年後の兵庫県南部地震で高速道路や新幹線の高架が落下した。神戸市では地震学者の警告を無視して想定地震を震度5と設定し、震度7の兵庫県南部地震が発生して被害が大きくなったと批判されている。
 このように地震は起こってみないことには100%安全とは言い切れない。しかし、地震が起こり被害が出てからでは遅い。神戸市の轍を踏まないためにも、浜岡も震度7を想定して備えるべきであるのではないだろうか。
 そこで、次章では起こるであろう地震に対して有効な浜岡原発の構造を耐震構造の面から検証していく。

アウトライン

テーマ 浜岡原発における有効な耐震構造

1.はじめに

 1.1 東海地震発生の可能性
 1.2 浜岡原発の現状と問題

2.浜岡原発耐震性の検証
 2.1 耐震構造について
 2.2 浜岡原発に有効な耐震構造の検証

3.おわりに
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